CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 49th

 私は恋に落ちた男女が共有できる部分について考える。体を重ねる瞬間、お互いに見詰め合う瞬間、囁きに我を忘れる瞬間、冗談に笑い合う瞬間。私たちは、体も心もひとつになったと感じることだろう。しかし、本当に? 思いが交錯し重なり合うひとときがいったい誰に証明出来るだろう。それらは、すべて甘い錯覚ではないのか、と私は思うのだ。二人の違う肉体を持った者同士がひとつになれるわけなどないように思える。
「NEWSPAPER」『120%COOOL』より

山田詠美は短編小説の名手であることは、もう明らかなのだが、その短編小説にも様々なタイプのものがあり、そこが面白い。
この『120%COOOL』に収められているのは、主に男女の恋愛を中心に描かれた、山田詠美があちこちの雑誌に書いていた頃の作品集だ。
最近は大人のホラーという感じの、テーマが恋愛とはまた少し異なる系統の作品も数多く書いているが、詠美の恋愛ものが好きな人にとっては、この頃の詠美の作品が一番しっくりくるかもしれない。
恋に落ちた瞬間のことをこんなにも細かく、そして論理的に描くことができる作家ってそんなにたくさんはいなくて、そこが詠美を読んでいて面白いと思う理由なのだ。

【DATA】
山田詠美「NEWSPAPER」
幻冬舎文庫『120%COOOL』
KEN'S NIGHT M5レフィル<祝祭摩天楼>
KEN'S NIGHT 2nd Track 5 A Night in Tunisia