CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 40th「珠玉の短編」

 そう、格調高さは敵である。夏耳漱子というペンネームも、文豪をちょいとからかってやるかい、とふざけて付けたのである。

山田詠美「珠玉の短編」より

山田詠美は実に様々なタイプの小説を書いている。
それらの小説はいくつかの系統に分かれると思うのだが、例えば「ぼくは勉強ができない」「放課後の音符」「ジェントルマン」「PAY DAY」などは青春小説と呼んで良いだろう。
「チューイングガム」「フリークショー」「ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー」などは恋愛小説のジャンル。
「晩年の子供」「色彩の息子」「学問」「無銭優雅」は純文学のジャンルに入れたい。
そして、もう一つのジャンルがユーモア小説だ。
例えば「快楽の動詞」「ラビット病」などがそういう類の小説と言えるだろう。
どこかコミカルで一見、いろいろなことを茶化しているかのように描いている。読みながら、笑ってしまうような作品をしばしばみかける。
この「珠玉の短編」もまさにそんな作品。だって、「夏耳漱子」だぜ!笑我
リズミカルに物語が進むのだが、それが実に心地よく、そして、思わず声に出して笑ってしまうほどだ。
茶化しているかのように思える小説でも、ちゃんとオチまで一気に読ませるところに山田詠美ワールドの面白さがあると思う。まるで珠玉の落語の小噺のようだ。

【DATA】
山田詠美「珠玉の短編」
講談社文庫『珠玉の短編』
KEN'S NIGHT M5レフィル<和風三色幕>
KEN'S NIGHT 2nd Track 4 I Left My Heart in San Francisco