CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 58th「サヴァラン夫人」

 食べるもので、その人の本質が見える。その真理から、相談者の行く末に助言を与える。これが夏子さんの占いの肝なのです。それまでのフォーチュンテラーになかった形態は人々を夢中にしました。夏子ファンの輪、急速に広まる! 
「サヴァラン夫人」『珠玉の短編』より

山田詠美は短編小説の名手である。『珠玉の短編』の中の「生鮮てるてる坊主」という作品で川端文学賞を受賞した時、さらにその想いを強くした。
川端文学賞は優れた短編小説に授けられる賞だから。
そして、その「生鮮てるてる坊主」が収録されている『珠玉の短編』は、そんな山田詠美の鮮やかな短編手法を存分に味わうことができる作品集だ。
とにかく、怖い。
最後の一文が、ホラーなのではないかと思えるほど。
でも、文体がそれとは正反対で淡々としていたり、ちょっとファンタジー調だったりするから、余計に最後の一文の怖さが効いている。
この「サヴァラン夫人」のその発想もまたユニークで、そんな占いがあったら、自分も受けてみたいと思ってしまったほどだ。

【DATA】
山田詠美「サヴァラン夫人」
講談社文庫『珠玉の短編』
KEN'S NIGHT M5レフィル<山荘冬休暇>
KEN'S NIGHT 1st Track 06 My Favorite Things