CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 90th    「指の戯れ」

 私はリロイという名を口の中で転がしてみる。それは私にとって糖衣錠のような物で、口の中に長くとって置くには苦すぎる。しかし、二年という歳月が私に余裕を与えていた。
「指の戯れ」『指の戯れ』より

山田詠美の初期の作品には黒人との恋愛を描いたものが多い。それは、詠美自身が黒人男性とつきあっていたということもあるだろう。
黒人男性との関係はあきらかに日本人男性とのそれとはまったく違うものだったであろうことが良くわかる描写が多い。
これはぼくのまったくの印象であるが、黒人男性との恋愛関係というのは、日本人の関係とと比較すると肉感的で、セクシャルな部分がとても大きいように思う。だが、もちろん、それは肉体だけの関係ではなく、さらにそこに心の繋がりも含まれなくては意味がないことなのだが、当時の日本人の感覚としてはそれはなかなか理解しにくいことだったのではないだろうか。
だからこそ、山田詠美はそこに疑問を呈する意味でこういう黒人男性との関係を描き続けたのではないかという気もする。
上記の表現も、やはり詠美らしい文章で、これも黒人男性との関係の中で生まれた感覚なのではないかと思っている。

【DATA】
山田詠美「指の戯れ」
新潮文庫『ベッドタイムアイズ・指の戯れ・ジェシーの背骨』より
KEN'S NIGHT M5レフィル<彩色音楽集>
KEN'S NIGHT 1st Track 08 Smoke Gets in Your Eyes ※ラメ入り