CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 87th    「つみびと」

 それなのに今、あえて混乱しようにも出来ないほどのすさまじい静寂が自分に忍び寄ろうとしている。ふと作業の手を止めたりした時に、そのことに気付いてしまうと叫び出したくなる。まさに、ずっと長い間、この瞬間を恐れて来たのだ。蓮音は、ようやく悟ったのだった。私は、自分自身と向き合うための余白の時間をなかったことにしたかった。そのために日々を愚かな行動で埋め尽くし続けたのだと。
山田詠美「つみびと」『つみびと』より

ネグレクト(幼児虐待)に真正面から取り組んだ問題作。
日経新聞の夕刊に連載されていた頃、ずっと読んでいたのだが、実はあまりにも辛すぎて、単行本化されてからは一度も読み返していない。
だって、本当に辛いんだよ。
様々な人の視点で描かれているのだが、特に亡くなる子どもの視点で描かれている箇所はあまりにも辛すぎて、新聞を読んでいる時もしんどかった。
でも、このブログを書くにあたって、少しずつ読み進めているのだが、そんな作品であっても、そこにはしっかりと山田詠美の視点や詠美節が感じられ、そこが詠美フリークのぼくの救いでもある。
なので、これからも少しずつこの作品ともう一度向き合い、このブログで紹介していこうと思う。
上記の部分は罪を犯した蓮音が刑務所で自分と向き合う時のモノローグである。
世間では鬼母などとののしられるような存在である彼女の心情を淡々と描いている詠美の筆力が感じられる部分なのではないだろうか。

【DATA】    
山田詠美「つみびと」    
中公文庫『つみびと』    
KEN'S NIGHT M5レフィル<夜景摩天楼>
KEN'S NIGHT 2nd Track 5 A Night in Tunisia ※ラメ入り