CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 37th「つみびと」

 子供の名前を考える時、ほとんどの親が子の幸せを願うものだと思う。あれこれと迷いながらも満ち足りている筈だ。この子には明るい未来が待っている筈、と確信に近いものを持って胸を高鳴らせる。たとえ何の根拠もなかったとしても。
山田詠美「つみびと」より

「つみびと」は読むのが辛い作品だった。
日経新聞の朝刊に連載されていたのだが、毎日この作品を読むのが辛くて辛くて仕方がなかった。もちろん、山田詠美のことだから、面白く読ませてくれるのではあるが、ネグレクトを題材にしているので、しばしば幼児を放置する場面が登場し、それを読むのが非常につらかった。
しかし、いまだにこの問題はニュースなどでも取り上げられるので、それだけこの問題は深刻なのだと思う。
山田詠美がここで描いているのは、抗うことのできない親子の血のつながりである。
そして、それは、個人の問題ではなく、社会全体の問題であるということも読み取れる。
だから、読み進めるのが辛い作品ではあるが、この作品はもっともっと高く評価されても良いのではないかとぼくは思っている。

【DATA】
山田詠美「つみびと」
中公文庫『つみびと』
KEN'S NIGHT M5レフィル<雨景摩天楼>
KEN'S NIGHT 1st Bonus Track The Rose