CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 84th    「ハーレムワールド」

 サユリの唇が離れて行く気配で目を開けると、ほんの数インチほどの位置で、彼女は微笑んでいた。その皮膚は生き生きと呼吸していてスタンの瞳を曇らせた。
「ハーレムワールド」『ハーレムワールド』より

「ハーレムワールド」は、主人公であるサユリの様々な男たちとの恋愛遍歴をちょっとコミカルに、かつシニカルに描いた作品である。
サユリは一見自由奔放な女性に見えるが、実は自分の欲望に忠実なだけで、それに対して非常に素直に生きている。だからこそ、周りの男たちは彼女に魅了され、いつの間にか翻弄されることになるのだ。
そんな男性との関係性を描いた中にも詠美らしい表現があちこちに見られ、上記のシーンなどはまさに初期の山田詠美の小説の真骨頂ともいえる表現と言えるだろう。

    
【DATA】
山田詠美「ハーレムワールド」
講談社文庫『ハーレムワールド』
KEN'S NIGHT M5レフィル<彩酒摩天楼>
KEN'S NIGHT 2nd Track 6 Autumn Leaves