CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 39th「明日、死ぬかもしれないよ」

 私は、一九五九年二月八日、東京都板橋区で生まれた。もちろん、三島由紀夫ではないので、その時の記憶があるとは書かない。彼は自伝的小説「仮面の告白」の冒頭で、産湯をつかわされた盥のふちの水のことを書いているが、本当かな? もしそうなら羨ましいと同時に、脳みそにかかる負荷はすごかったんじゃないか、といらぬ憶測をしてしまう。

山田詠美「明日、死ぬかもしれないよ」より

今日は山田詠美の誕生日である。
ということで、まずは詠美さん、お誕生日おめでとう!
取り上げた作品は山田詠美初となる本格自伝小説だ。
三島由紀夫が生まれた時の記憶があると書いた小説を引き合いに出し、自分の生まれた時の初めての記憶について書いている。
山田詠美は記憶力の良い人で、その記憶力が創作の源になっているということを本人も随筆などで書いているのだが、この自伝小説を読んでいると、本当に良くいろんなことを覚えているなぁと感心してしまう。
それだけ観察力が子どもの頃からあったということなのだろう。
そして目に映るものを何かしらの形で表現したいというのが詠美の創作の原動力になっているのではないだろうか。
この作品はデビュー前後のことが書かれているので、いつか宇野千代が「生きて行く私」を書いた84歳の頃にまたこの続編を書いて欲しいなぁと思っている。

【DATA】
山田詠美「明日、死ぬかもしれないよ」
講談社『私のことだま漂流記』
KEN'S NIGHT M5レフィル<祝祭摩天楼>
KEN'S NIGHT 1st Bonus Track Shine