CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 71st    「新鮮味の保存法」

素敵で新鮮な会話さえあれば、行き飽きたレストランのディナーテーブルでも、ハンバーガー屋のカウンターでも、楽しいデートが出来るのは当り前だ。この当然のことを忘れさせようとする仕掛人のわなに、どうか、はまってしまわないようにね。
「新鮮味の保存法」『メイク・ミー・シック』より

メンズ・ノンノに連載されていたエッセイは、今でもぼくにとってはバイブルのようなもので、時々、思い出したように取り出しては読み返している。
本当の意味でのかっこいい男とはどういう男か、ということを詠美なりの視点で描いているので、読み返すたびに背筋がピンと伸びるのだ。
連載当時はバブルが終わりかけということもあり、若い男子たちはこぞってDCブランドに身を包み、おしゃれなレストランでデートをしたり、イカした車でおでかけしたりしていた。
そんな男子たちに向けて詠美が本当にかっこいい男の子って何だろう?と疑問を投げかけているのだ。
ぼくは残念ながら都内に住んでいながらも、バブルとは無縁の生活を送っていた地味な男子だったし、この作品と出会った時はすでに文庫本化されていたから、少し時代はずれているのだが、それでも二丁目で遊びに行くときは必ずポケットに忍ばせて、行き帰りの地下鉄の中で読んでいたし、色々と自分なりに参考にするところはたくさんあった。
今の自分の様々な価値観を形作ってくれたのは、この作品によるところも多いだろう。
デートに関する上記の考察も、本当に共感しかない。


【DATA】    
山田詠美「新鮮味の保存法」    
集英社文庫『メイク・ミー・シック』
KEN'S NIGHT M5レフィル<彩酒摩天楼>
KEN'S NIGHT 2nd Track 4 I Left My Heart in San Francisco