CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 7th 「Body Cocktail」

 あなたはあなたよ。そんなふうに慰める時の彼女は、大人びているけれども決してお姉さんぽくはない。彼女は、妹のような存在や、どこかに連れ立って歩く仲間のような友だちを持たない。彼女はいつもひとりで独立している。他人にすり合わせて、糸を引かせるようなべたついた関係を持たない。すごいなあ、と、だから私は感嘆してしまうのだ。なにも私たちの年頃でなくたって、人々は、他人と組み合わせなくては自分の存在を確認出来ないんだもの。


山田詠美「Body Cocktail」より


主にティーンの女の子向けの雑誌「Olive」に連載されていた『放課後の音符』は、ぼくにとっては詠美と出会うきっかけとなった本だ。社会人になってから、大学の文芸部で一緒だった読書好きの女友だちから薦められて読み始めたら、あまりにも面白くて、一気に読み終えてしまい、この作家の作品は絶対に人生のバイブルになるに違いないと思ったぼくは、その週の週末に神田の三省堂に行き、当時発売されていた山田詠美の本を片っ端から買い込み、夢中になって読んだのである。
もしぼくがあの時、彼女にこの本を薦められなかったら、きっと今の自分はいなかったかもしれない。
ぼくが詠美の作品が好きなのは、とにかく自分と同じ価値観の主人公が多いから。
例えばこの作品に出てくるカナという女の子は「十七歳だけど、もう男の人とベッドに入ることを日常にしている」子だ。でも、自分というものをしっかりと持っている。女同士でつるんだり、男に媚を売ったりすることなく、自分の価値観を持って行動している。そんなところに共感するのだ。
例えば、インスタとかを見ていても思うんだけど、常に誰かとつるんでいないと生きていけないんじゃないかと思われる人種というのがいる。その人の投稿を見ると、いつも誰かとキラキラとした写真を撮っている。もちろん、そういう人生を否定はしない。ぼくだって、内心羨ましいなと思うこともある。
でも、ぼくにはそういうことが到底できない。
だって一人の方が楽なんだもん。
だから、そういう主人公が多い詠美の作品に共感してばかりいるのだ。

【DATA】
山田詠美「Body Cocktail」
新潮文庫『放課後の音符(キイノート)』
KEN'S NIGHT M5レフィル<雪山冬休暇>
KEN'S NIGHT 1st Track 06 My Favorite Things