CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 21st「セイフティボックス」

 東京には、もてる男ともてる女がとっても少ないような気がするなあ。
 格好のいい人間というのも少ないよね。お洒落な人や綺麗な人は東京にはうんといるけど、ひとりで歩いているだけで格好のいい男や女がいない。どうしてかなあ。皆、他人の目を気にし過ぎて、それがきっとマイナスの方向に出てしまっているからかもしれない。どうせ他人の目を気にするなら、徹底的に自分をアピールして大股で歩くくらいのこと、やって欲しい。


「セイフティボックス」より

週刊現代に連載された山田詠美初の連載エッセイ。
1988年だから、詠美がデビューして間もないころだ。
『ベッドタイムアイズ』で衝撃的なデビューをした山田詠美は、当時、色々なマスコミで「黒人とのセックスを描いた女流作家」という形で報道された。
今から思うと、とんでもない話なのだが、当時の世間なんてそんなものだった。
特に中高年以上の男性から猛バッシングを受けた。
だが、それに対して詠美は一切ひるまなかった。
週刊現代」はそんな中高年男性をターゲットにした週刊誌だ。そこに詠美さんは毎週エッセイを書き続けたのである。
これを初めて読んだ時、とにかく痛快でスカッとした。
ぼくはもう社会人になっていて、二丁目でも遊び始めたころのこと。
何となく世間一般で言われている「常識」とやらに疑問を持ち始めた頃でもある。
だから余計に、「いいぞ!詠美!もっと言ってやれ!」と思いながら読み進めて行った。
そして、それは今でも同じ気持ちだ。
いまだに、当時の価値観を引きずっている人を見ると(男女を問わず…だけど)、詠美の当時のエッセイを読め!と言いたくなってしまう。
でも、悲しいかな、そういう人たちって、こういうエッセイを読んでも理解できないんだろうなぁ…涙。

 

【DATA】
山田詠美「セイフティボックス」
講談社文庫『セイフティボックス」
M5レフィル<夜景摩天楼>
2nd Bonus Track Frozen