CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 9th 「花火」

「涙が出るほど、恋しいのは、発情期だからよ。お互いがお互いを欲しいと思うから、せつない気持になるのよ。それが男と女よ。まだ肉体的なつがなりを持たない関係ならなおさらよ。信頼関係ってのは、寝てみて、初めて生まれるものなのよ」

 

山田詠美「花火」より

山田詠美直木賞作家ではあるが、ぼくは本当は芥川賞作家なのではないかと思うことがある。直木賞はどちらかというとエンターテインメント性のある文学作品に贈られる賞で、芥川賞は純文学と呼ばれるジャンルの文学作品に贈られる賞である。
確かに賞を受賞した「ソウルミュージックラバーズオンリー」はエンターテインメント性が高いものではあるが、ストーリーそのものよりも、そこに書かれている文章や言葉で人々を惹きつける。だから、ぼくは山田詠美は純文学作家だと思っている。
そのことが顕著にわかる作品集が『晩年の子供』である。どの作品も、子供の目を通して大人の世界が描かれている。
「花火」は、性に対して対照的な姉妹のやり取りが中心に物語が薦められる。京太郎さんという幼馴染と清い関係を保つ妹と、結婚している男性との恋にうつつを抜かしている姉の会話が面白い。
そこにデビュー当時から詠美の作品の根底に流れている「心と身体」というテーマが流れている。
今回抜粋した部分もまさにそのことを考えさせてくれる文章だ。これはひょっとしたら人類にとっての永遠のテーマなのかもしれないとすらぼくは思っている。
【DATA】
山田詠美「花火」
講談社文庫『晩年の子供』
KEN'S NIGHT M5レフィル<彩酒摩天楼>
KEN'S NIGHT 1st Bonus Track Shine