CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 1st 「ベッドタイムアイズ」

スプーンは私をかわいがるのがとてもうまい。ただし、それは私の体を、であって、心では決して、ない。


山田詠美「ベッドタイムアイズ」より

山田詠美のデビュー作「ベッドタイムアイズ」の冒頭の一文である。
詠美はこの文章を書くまでに数年がかかったと、エッセイなどで述べているが、この文章こそが山田詠美のそれからの作品の根底に流れているテーマと言っても良いだろう。
そのテーマというのは、「心と身体の関係」だ。
ぼくが個人的に世界最高傑作だと思っている『熱帯安楽椅子』の中でもこの心と身体にまつわる名言を残しているのだが、詠美の作品には、そういったフレーズが時々登場する。
これからもこのブログではそういった詠美の根底に流れているテーマにまつわる文章も紹介していきたい。
さて、この冒頭の文章でもっともぼくが素晴らしいと思うのは、句読点の使い方だ。
特に最後の「心では決して、ない」の部分。
これぞまさしく詠美ならではの読点の使い方で、このような使い方はそれからの詠美の作品にもしばしば登場している。
こういうところにぼくはしびれてしまうのだ。

【DATA】
山田詠美「ベッドタイムアイズ」
新潮文庫『ベッドタイムアイズ・指の戯れ・ジェシーの背骨』
<用紙&インク>
KEN'S NIGHT M5レフィル 祝祭摩天楼
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