CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 14th「指の戯れ」

 私は彼の体に快楽を与え始めた。私の唇は熱されたクレヨンのように溶けて、彼の体に容易に絵を描いた。黒いキャンバスは私をはじかない。私の髪の毛は彼と私の間で孤独に漂泊する。彼は、僕に与えてくれと私に懇願する。私は、そのせつない様子に感動して涙ぐむ。

 

山田詠美「指の戯れ」より

「ベッドタイムアイズ」でデビューした山田詠美は、様々な作品の中で、心と身体の関係について描いている。
特に初期の作品ではその関係性がより濃く出ている。
「指の戯れ」には黒人のピアニストとのセックスのシーンがしばしば登場し、そのどれもが非常に濃厚である。
でも、詩的に描かれているので、生々しくないところが山田詠美マジックと言えるだろう。
上記の部分もクレヨンで絵を描くというメタファーを使ってセックスを表現しており、そこにぼくは感銘を受けたし、その表現がぼくには非常に斬新に思えたのだ。

【DATA】
山田詠美「指の戯れ」
新潮文庫『ベッドタイムアイズ・指の戯れ・ジェシーの背骨』収録
KEN'S NIGHT 五線譜箋<流星摩天楼>
KEN'S NIGHT 1st Bonus Track The Rose