CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 19th「〇をつけよ」

父親がいない子供は不幸になるに決まっている、というのは、人々が何かを考える時の基盤のひとつにしか過ぎない。そして、それは、きわめてワイドショウ的で無責任な好奇心をあおる。良いことをすれば、父親がいないのにすごいと言い、悪いことをすれば、やはり父親がいないからだということになる。すべては、そのことから始まるが、それは、事実であって定義ではないのだ。事実は、本当は、何も呼び起こしたりしない。そこに、丸印、ばつ印を付けるのは間違っていると、ぼくは思うのだ。父親がいないという事実に白黒な付けられないし、そぐわない。何故なら、それは、ただの絶対でしかないからだ。

山田詠美「〇をつけよ」より

『ぼくは勉強ができない』は、『放課後の音符』とともに、山田詠美を代表する青春小説と言って良いだろう。
今でもこの両作品はしばしば若い人たちの必読書として取り上げられることが多い。
『ぼくが勉強ができない』は、時田秀美という男子高校生が主人公。彼の眼を通して描かれる大人の不条理だとか、常識と呼ばれていることに対する疑問などが共感を呼ぶ作品である。
この作品を読むにつれ、本当の意味での教育というのは大切だなと思うし、と同時に、この作品は若い人だけではなく、大人になって、色々な常識などに囚われている人にも読んでもらいたい。
特に最近の政治家と呼ばれる先生方は読むべき本だ。
まぁ、そんなこと言ってもわからない先生たちはいっぱいいるだろうけどね。本当に情けないなぁ…。

 

【DATA】
山田詠美「〇をつけよ」
新潮文庫『ぼくは勉強ができない」
M5レフィル<青色日本景>
2nd Track 4 I Left My Heart in San Francisco