CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 17th「ベッドの創作」

 私、セックスって、すごく重要なもんだと思うの。だから、色々な人が文学にしたがるんじゃないかしら。女はおずおずと言う。そうかなぁ、と男は呟く。でもねぇえ、セックスは重要よ! と叫んでる女流作家となんか、ぼくはやりたくないねえ。女は、その言葉に少し傷つく。わざわざ、男とのベッドのために、高価な絹の下着を身に付け、女友達の誘いを断わり、見たいテレビも見ずに、このホテルに飛んできたのだ。それは、彼女にとって、彼とのセックスが、とても重要な位置をしめているからに他ならない。

 

山田詠美「ベッドの創作」より
文春文庫『快楽の動詞』

『快楽の動詞』は、日本語の様々な言葉を題材にした、ちょっと実験的な小説集である。
ユーモアなのか、それとも風刺なのか、微妙なところがまた面白い。思わずクスッと笑った後に、実はその言葉の奥に潜むダークな部分に気づき、ぞっとするという部分もある。
この「ベッドの創作」も、ある男女のホテルでのやり取りを通して、主人公の女性が、ある同じシチュエーションを俗っぽい小説家が書くようなパターンAと、山田詠美的なパターンBに分けて創作するという形で話が進み、その対比が本当に面白い。

【DATA】
山田詠美「ベッドの創作」
文春文庫『快楽の動詞』
KEN'S NIGHT M5レフィル<赤色日本景>
KEN'S NIGHT 1st Bonus Track Thank You for the Music