CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 16th「無銭優雅」

 栄は、どんどん、私に愛情を使わせる。湯水のように無駄づかいさせる。けれども、私は、いつだって潤ったままだ。何故なら、彼自身も都合の良い男になって、私に愛情を注ぎ込むのをやめないから。人のために自分を差し置くのを信条とするような出来の良い人間には、永遠になれないと思っていた。でも、ようやく解ったの。自分のためにも、そうしてくれる人のためになら、いともたやすく、一歩下がることが出来るんだって。ううん、一歩どころか三歩下がってもいいって感じ?

 

山田詠美「無銭優雅」より

本当の意味での豊かさというのは一体どういうものなんだろう?とぼくはこの作品を読むたびに思うのである。
目に見えない部分、つまり精神的な部分が満たされることが、実は本当の豊かさなのではないだろうか。でも、じゃあ、それを満たしてくれるもの、というのは果たして何か?
それはやっぱり心から愛し、そして愛されていると実感できる人と一緒に過ごす日々なのではないだろうか。
まさにそれが「無銭優雅」なのである。
その愛情の注ぎ方が描かれているのが上記のフレーズ。
愛に飢えて、枯渇している今のぼくには非常に憧れの世界である。

【DATA】
山田詠美「無銭優雅」
幻冬舎文庫『無銭優雅』
KEN'S NIGHT M5レフィル<山荘冬休暇>
KEN'S NIGHT 2nd Track1 Misty