CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 12th「バック ステージ」

私の周りを取り巻く女友達は、皆、とても大人で、人を傷つけて来た後悔を、せつない気持で抱えているから、始まりかけた恋には、少しばかり臆病だ。新しい恋に落ちる時、それは、彼女たちにとって、いつも初恋だと私は思う。

 

山田詠美「バック ステージ」より

若い頃は、勢いで恋を始めることができた。身体から関係を始めるのも、わかりやすくて良かった。
でも、いろんな経験をしていると、余計にあれこれと考えてしまって、最初の一歩を踏み出せなくなることが多い。
年を重ねて、いろんなラヴアフェアを経験すればするほど、傷つくこと怖くなったり、自分でもどうしたら良いのかわからなくなったりする。
そんな気持ちを詠美はしっかりと言語化してくれる。
だから、ぼくたちにとって、詠美の本はテキストになりうるのではないだろうか。
この文章もそう。
恋を始める時、誰もが不安になる。
この人で良いのだろうか? ふたりの関係はどうなるんだろうか? 傷ついたり、傷つけたりすることになるんじゃないか? 恋愛にうつつを抜かして、何も手につかなくなるんじゃないか? そんな様々な不安を抱えるのは、何度恋に落ちても同じこと。だから新しい恋に落ちる時、それは初恋と同じなのである。
詠美のこの言葉に背中を押されて恋に落ちる、というのもありなんじゃない?と思ったりもして。


【DATA】
山田詠美「バック ステージ」
幻冬舎文庫『チューイングガム』
KEN'S NIGHT M5レフィル<美酒摩天楼>
KEN'S NIGHT 2nd Track3 The Girl from Ipanema