CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 13th「リエコ」

男の良さはどこで決まるのだろう。そう彼女は考える。彼女は愛し合っている最中に、恋に落ちるかもしれないと囁いた。けれど、本当はそうでないことを知っている。ムゲンで自分を引き止めた彼の目は真剣だった。この人、私に関心を持っている。そう気づいた時が第一段階だ。自分に関心を持っている男を受け止めるか受け止めないか。恋するきっかけは、そんなところにも存在している。

 

山田詠美「リエコ」より

赤坂に昔あったクラブ「ムゲン」を舞台に描かれる短編小説集『フリーク・ショウ』もまた、詠美の恋愛語録にあふれた作品だ。
黒人の男性とばかり付き合ってきたリエコが、ひょんなことから日本人のケンと付き合うことになるという話なのだが、その過程の中で上記のようなフレーズが出てくる。
恋するきっかけというのはどこにあるのか、ということを問いかけてくるこの文章に、ぼくはドキッとした。
ここ数年、色々と活動してはいるけれども、なかなか次につながるような出会いに恵まれなかったのは、きっと、自分に関心を持っている男を受け止めることができなかったからなんじゃないか?という気もしてきた。
それは逆もまた同じこと。
ぼくが関心を持つ男がぼくを受け止めることができなかった。
恋愛というのは一人では進めることができない。
双方が同じ気持ちで相手の好意を受け入れないと恋は始まらない。
そんなことをぼくはこの文章から思ったのである。

【DATA】
山田詠美「リエコ」
幻冬舎文庫『フリーク・ショウ』
KEN'S NIGHT ミニ正方形メモ帳<彩色音楽集>
KEN'S NIGHT 1st Track 11 Smile