CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 3rd 「姫君」

こらえている様子というのが、男を一番魅力的に見せる、とわたくしは思う。それが、どのような原因からであろうとも。魅力はクロスワードパズルのように徐々に完成されて行く。こらえている額、こらえている眉、こらえている口許などなど。


山田詠美「姫君」より


詠美繋がりの女友だちとしばしば自分の好きな詠美の作品について話すのだが、彼女が好きな作品が今日ご紹介する「姫君」である。
しかし、実はぼくはこの作品が発表された頃はそれほどこの作品のことが良く理解できなかった。
なんだかふざけているのか真面目なのかが良くわからない作品だったからだ。
世界のために自分のことを「姫子」と源氏名で読んでいるホームレスの女性と、そんな彼女をひょんなことから家に連れ込むことになってしまったいたいけな青年摩周の話。
姫子の一人称の視点と、摩周を三人称で見ている視点の両方が交差して物語が進んでいくのだが、今改めて読み返してみると、リズミカルで、そして、理屈抜きに面白い。
あぁ、この作品はリズム感を楽しむ作品なんだなと思った。
そして、その中でストレートに愛情をぶつける姫子と、その愛情を戸惑いながら受け止める摩周の様子が対比となって描かれていて、そこがこの作品の肝だと言えるだろう。


【DATA】
山田詠美「姫君」
文春文庫『姫君』
<用紙&インク>
KEN'S NIGHT M5レフィル<夜景摩天楼>
KEN'S NIGHT 1st Track 04 Night and Day