CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 244th Crystal Silence    

「私の口も、その時、きけなかったわ。耳だって聴こえなかったわ。あんなに騒がしい波の音だってよ。でもね、音のないものの音が、聴こえる瞬間て、恋をしているとあるものなのよ」
山田詠美「Crystal Silence」    
『放課後の音符』より    

恋をしている瞬間にいつもとは違う感覚に陥ることがある。それは人によっても違うだろうし、その時のシチュエーションによっても異なってくるだろう。周りのすべてのことがスローモーションに見えたり、あるいは自分たちのまわりだけが、特別なフィルムに覆われた感覚に陥ることもあったり。そして、この描写に描かれた恋の瞬間も、あり得ることなのではないだろうか。特に耳の聞こえない少年と一緒だからこそ、彼女も同じように感じたに違いない。
【DATA】    
山田詠美「Crystal Silence」    
新潮文庫『放課後の音符』    
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