CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 238th Crystal Silence

 私は、人気のない砂浜に寝そべるマリとその男の子を想像した。私は、すっかりどぎまぎしていた。あっさり、寝ちゃったのなんて言われるより、彼女の言葉は、はるかに私の想像をかき立てた。じりじりと陽に灼ける体を気遣うことも忘れて、耳に唇を付けるマリを思うと、私の心の中に鮮明な色彩が広がって行く。
山田詠美「Crystal Silence」
『放課後の音符(キーノート)』より

この場面もこの作品の中で鮮明な印象を読者に与える。音のない世界だからこそ、より色彩がくっきりと「私」の中に広がるのだろうし、読者も「私」と同じような風景をそこに見る。
まさにこの作品のタイトルである「Crystal Silence」な世界がそこにはあるのだ。
【DATA】
山田詠美「Crystal Silence」
集英社文庫『放課後の音符(キーノート)』
KEN'S NIGHT M5レフィル<海辺夏休暇>
KEN'S NIGHT 2nd Track 8 When I Fall in Love