CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 243rd Crystal Silence

「そうよ。そういえば、砂糖きびの畑にも行ったわ。私、初めてで、どうやって味わうのか解らなかった。彼が茎を切って、私に渡したの。それを彼がするように噛みしめたの。甘い味が広がったわ。生暖かくて、すごくだらしない甘い味。太陽って、ずい分、いやらしい味を作るものだと思ったわ。だって、私、噛みしめた砂糖きびの味が舌の上を流れて行った時、どうしても、彼にキスしたくなっちゃったんだもの」
山田詠美「Crystal Silence」
『放課後の音符(キーノート)』より

さとうきびを直接食べたことはないけれども、何となく想像できる。ココナッツジュースを直接飲んだ時に感じたような青くささのようなものがあるんじゃないだろうかとか。そして、この文章の中でぼくがすごいなと思うのは

太陽って、ずい分、いやらしい味を作るものだと思ったわ。

というフレーズ。まさに、さとうきびはそんな味だったのだろう。それをこういう風に表現するところが詠美らしくて好きなのだ。

【DATA】
山田詠美「Crystal Silence」
集英社文庫『放課後の音符(キーノート)』
KEN'S NIGHT 2nd Bonus Track Don't Rain on My Parade
KEN'S NIGHT  M5レフィル<海辺夏休暇>