CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 240th Crystal Silence

「(続)でも、離れた場所から、彼の姿を見つけるでしょ。真っ黒な顔で私を見て、すごく嬉しそうに笑うのよ。その時の白い歯を見ると、私の胸、痛くなった。心にも体にも、あれで噛み跡を付けて欲しいって思ったわ。いても立ってもいられないの。男が欲しいって、こういうことかって思った。立ってるだけで、私を涙ぐませた奴なんて初めてよ。私、ちょっと口惜しかった。初めて、男の子に負けることの気持ちよさを味わっちゃったんだもの。それも、何も持ってない男の子によ」
山田詠美「Crystal Silence」
『放課後の音符(キーノート)』より

「Crystal Silence」は、『放課後の音符』の中でも非常に官能的な小説だと思う。主人公は女子高生にもかかわらず、すでに男と寝ることを知っているし、自分なりの美学を持っている。だからこそ、余計にその官能性が強く伝わってくる気がする。
大人になると、いつのまにか失ってしまうひりひりとした恋愛感情と、官能的な感情が見事に絡み合って、主人公の体と心を包み込むような感じ。
そういった雰囲気がこのシーンからは読み取れるのではないだろうか。
【DATA】
山田詠美「Crystal Silence」
集英社文庫『放課後の音符(キーノート)』
KEN'S NIGHT 2nd Track 3 The Girl from Ipanema ※ラメ入り
KEN'S NIGHT M5レフィル<海辺夏休暇>