CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 241st Crystal Silence

暑かったわ。クーラーなんて、ない。彼は、それなのに汗なんてかいてなかった。慣れてるのね。島の気候に。そこから出たことなんてない子だもの。いつも髪の毛を潮風にさらして、気分良さそうだったわ。でも、私はそうは行かなかった。じっとしてるだけで、体じゅうがびっしょりになっちゃうの。彼は、笑って私を海に連れて行ってくれたわ。
山田詠美「Crystal Silence」
『放課後の音符(キーノート)』より

夏の暑さが本当に苦手で、いつも汗だくになりながら外を歩く羽目になるぼくにとっては、この島の少年が非常に羨ましい。
都会にいても、たまに汗をあまりかかなさそうな人をみかけ、そのたびに羨ましいなぁ、どんな肌なんだろう?って思ってしまうのだが。
南の島にずっと住んでいるとそうなるのかなぁ。ふと、バリ島で知り合った、美しいホテルのボーイさんを思い出した。彼のバイクに乗って彼の実家に連れていってもらったことがあったんだけど、確かにその彼も汗かいていなかったなぁ。ぼくは汗だくだというのに。
この作品を読んでいると、ぼくはそのバリ島で知り合ったボーイのことを思い出してしまうのだ。
【DATA】
山田詠美「Crystal Silence」
集英社文庫『放課後の音符(キーノート)』
KEN'S NIGHT LIMITED Track01 Blue in Green
KEN'S NIGHT M5レフィル<海辺夏休暇>