CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 199th 無銭優雅

 そして、私は、いつのまにか同い年の男と少しずつ過去を作り始めている。あの時、似合いの男女を形作るのは年齢ではないなあ、と深く頷いた私であったが、同い年というのは、特別な意味を持つような気がしている。何しろ、生まれてから同じ年数を生きて来ているのだ。当り前のことだけれど。何かあった時に、年の差を理由に出来ない。それがとても楽なことであるのに使えない。
山田詠美「無銭優雅」
『無銭優雅』より

デビュー当時、若い女性の間で恋愛小説の名手と呼ばれた山田詠美が、所謂中年と呼ばれる世代の男女の恋愛を静かに描いた作品。
この中にも、山田詠美ならではの視点で描かれたシーンがたくさんあるので、読んでいてとても楽しい。
いや、楽しいという言い方はちょっと違うかもしれない。若い頃に読んだら、そんなに「楽しい」と思わないかもしれない。今のぼくの年齢(55歳)だから楽しいというか、納得する文章がたくさんあるのだ。
でも、ぼくは今まで同い年の男とつき合ったことがないので良くわからないのだが、でも、同い年というのは、確かに様々なふたりの間で生じるであろう違和感を年のせいにできないんだろうなという想像がつくし、その着眼点に驚かされる。
【DATA】
山田詠美「無銭優雅」
幻冬舎文庫『無銭優雅』
KEN'S NIGHT M5レフィル<夜景摩天楼>
KEN'S NIGHT 3rd Track02 Tea for Two