CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 130th ジェントルマン

 二人は、同じ高校の連中が来ない珈琲店の片隅のスタンドで、長い時間、語り合った。放課後のすべてを分け合ったと言っても良い。感動した本や映画、夢中になっている音楽などについて。出会う以前の自分に関する事柄を報告するのにやっきになった。そして、ようやく過去を語り尽くして現在に行き着いた時、友情の下地は出来上がっていた。そこからは、もう前置きなしに、共有する今現在を考察すれば良い。
山田詠美「ジェントルマン」
『ジェントルマン』より

同級生の漱太郎を愛する夢生が、彼の良き理解者となる圭子と仲良くなる過程が描かれたこのシーンは、その後、ぼくの胸の中で深く刻み込まれることになった。
誰かと仲良くなる時、誰もがこのような経験をしているのではないだろうか。お互いの知らないそれまでのお互いの過去のことを語り合い、シェアした後に、本当の友情が生まれること。
大人になればなるほど、そういう関係を築くのは難しくなりつつあるけれども、でも、本当に理解し合えるような関係というのは、そういう過程を経るのが自然で、それを詠美がこういう形で言語化してくれたことに感謝したい。
【DATA】
山田詠美ジェントルマン
「ジェントルマン」講談社文庫『ジェントルマン』
KEN'S NIGHT M5レフィル<夜景摩天楼>
KEN'S NIGHT 1st Track 11 Smile ※ラメ入り