Day 38th「賢者の愛」
まだまだつたないところは沢山あるけれども、ずい分と人の気を引く所作を身に付けた、と感慨深い気持になるのです。あのフルートグラスの掲げ方のあだな感じなんて、たいしたもの。そう思いついて、彼女は、吹き出したくなってしまいます。あだなんて言葉は、本来、艶めかしい女に対して使うもの。けれど、無骨な男が、そんな言葉に相応しい仕草を垣間見せる時、彼女は自分の価値基準が音叉のように空気を震わせて、相手の許に届いているのを知るのです。
山田詠美「賢者の愛」より
谷崎潤一郎の「痴人の愛」から着想を得た作品。
女友だちの息子を魅力的な男性に育てるという話なのだが、ぼくはいまだのこの作品をきちんと読みこなしていない。
もちろん、物語として、すごく面白く読み進めたし、楽しく読んだ。でも、まだ自分の心にすっと入ってきていない部分があって、自分の中では「保留」の状態。
この作品をどう解説したら良いのかわからないのである。
そもそも、自分にはまだ誰かを育てるという発想がないというか。
自分のことすら持て余しているのに、他の人のことなんか構っていられないという気持ちでいるから、この作品に登場する真由子に感情移入できない。
しかし、この作品を取り上げるにあたり、少し読み直してみたら、自分も多少なりとも成長しているせいか、すんなりと読めそうな気がしているので、もう一度ちゃんと読み直してみたいと思っている。
【DATA】
山田詠美「賢者の愛」
中公文庫『賢者の愛』
KEN'S NIGHT M5レフィル<彩酒摩天楼>
KEN'S NIGHT 1st Track08 Smoke Gets in Your Eyes