CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 250th Crystal Silence

 私たちの生活って、色々なディティルによって動かされすぎているんじゃないかと、時々思ってしまう。たとえば、あそこのブランドのお洋服が欲しいからアルバイトをするとか、誰々は、どこそこのお店に出入りしているから格好いいとか。でも、それは自分の価値観から出た言葉じゃない。「あそこのブランド」とか、「どこそこのお店」のようなのって、ほとんど多数決の世界だ。
山田詠美「Crystal Silence」
『放課後の音符』より

このシーンは「Crystal Silence」の一番のテーマといっても良いだろう。
特に『放課後の音符』が「Olive」というティーン向けの雑誌に連載されていたことからも、この部分がいかに詠美が若い女の子たちに伝えたかったかということをわかる。
特に若い女の子たちというのは、ブランドだとか、ステータスというものに左右されてしまうことが多い。でも、そんな表面的なことに惑わされずに、自分なりの視点で物事を見る必要があるんだよ、といことをこの作品を通して詠美は訴えたいのだ。
特に最近ではSNSの普及によって、「他人からの評価」というのが、大人であっても気になってしまう風潮がある。
だが、やはり、そういう周りの目を気にせずに、自分の本当に美しいと思うものは何か、何が本物なのかを見極める力を若いうちからつけて欲しいなとぼくも老婆心ながら思ってしまうのだ。
【DATA】
山田詠美「Crystal Silence」
新潮文庫『放課後の音符』
KEN'S NIGHT M5レフィル<海辺夏休暇>
KEN'S NIGHT 2nd Track2 Summertime