CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 34th「ヒンズーの黒砂糖」

恋は、おいしいお酒や洒落た会話などから生まれるのでは決してないのだ。いつも、それは、うっかりしていたら、何かが心に引っ掛かってしまった、というような偶然から端を発するのだ。

「ヒンズーの黒砂糖」より

『24・7』は詠美の初期の短編集なのだが、ぼく自身、夢中になって何度も読んだ短編集のひとつである。
男と女の恋を詠美ならではの筆致で描いているのだが、その中に、詠美節がたくさん隠れているのである。それを読み解くのがこの作品集の醍醐味と言えるだろう。
月刊プレイボーイのために書かれたこの作品は、長年よりそった夫婦がアジア(具体的な地名は出てこないのだが、登場人物の名前や舞台設定やタイトルから恐らくバリ島と思われる)に旅にでかけ、その妻が現地のボーイと恋に落ちるという話。
それを官能的に描き、そして最後の一文で読者をこの作品の虜にしてしまうその手腕は見事と言わざるを得ない。
この短編集にはそんな山田詠美ならではの視点で描かれた恋愛の話が集まっているので、ぜひいろんな人に読んでもらいたいと思っている。

【DATA】
山田詠美「ヒンズーの黒砂糖」
幻冬舎文庫『24・7(トウェンティフォー・セブン)』
KEN'S NIGHT M5レフィル<祝祭摩天楼>
KEN'S NIGHT 2nd Track 9 Round Midnight