CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 78th 「A2Z」    

 彼は、自分の飲みかけのワイングラスを少しだけ移動させた。白ワインを通した陽ざしが、私の指に金色のラインを引いた。その一番光り輝く点が、私の薬指に落ちた。
「夏美にやる。この指輪」
 それは本当に指輪のように、私の手を飾っているのだった。
「夏美が結婚指輪をはめてる女じゃなくて良かった」
「A2Z」    『A2Z』より

Amazonプライム限定で後悔されている深田恭子主演の「A2Z」は比較的原作に忠実に描かれている。
ぼくはすでに二十年前、この作品が小説現代に一挙書き下ろしで掲載された時に初めて読み、その時からずっと何度も何度も読み続けているほど愛読している小説だ。
そして、そんな中で一番印象に残ったのがこのシーンから始まる部分だ。
だから、今日から3日間にわたり、そのシーンをご紹介していきたいと思う。
もし、ワインが飲めたら、きっとこんなシーンに憧れるんだろうなぁ。
    
【DATA】    
山田詠美「A2Z」    
講談社文庫『A2Z』
KEN'S NIGHT M5レフィル<美酒摩天楼>
KEN'S NIGHT 2nd Track 5 A Night in Tunisia ※ラメ入り